不動産名義変更|不動産の名義変更ってどんな時に必要になる?方法は?

不動産

家を売却したり相続したりする際に、所有者の変更をするためには、「登記」と呼ばれる手続きが必要です。

登記は、名義変更を行うための手続きであり、方法や費用、必要な書類は、登記の理由によって異なります。

以下では、それぞれのケースについて詳しく説明します。

不動産の名義変更とは?

相続や売買などにより、家の所有者が変わる場合、家の「名義変更」が必要となります。

名義変更とは、不動産の所有権と関連する手続きのことであり、名義変更を行うことで、他の人に所有権を主張されることなく、自分の不動産を守ることができます。

名義変更は自分で行うことも可能ですが、書類の準備や知識が必要であり、一般的には司法書士に依頼することが推奨されています。

しかし、初めて名義変更を行う方にとっては、「具体的な手続きはどのようなものか?」や「いつまでに行うべきか?」など、分からないことや不安なことが多いかもしれません。

そこで今回は、家の名義変更が必要かもしれない方に向けて、名義変更が必要となるケースや、手続きの具体的なステップ、必要となる書類について詳しく解説していきます。

これにより、名義変更に関する不安や疑問を解消し、スムーズに手続きを進めることができることでしょう。

家の名義変更が必要になる4つのケース

通常、家の名義の変更が必要となる事例は、主に以下の4つが挙げられます。

不動産売買

家を売買する際、買主が他の人に所有権を主張するためには名義変更を行わなければなりません。

一般的には、家の名義変更は売買代金の支払いや引き渡しと同じタイミングで行われます。

また、売却する家に抵当権が設定されていた場合には、同時に「抵当権抹消登記」という手続きも行われます。

この手続きによって、売主が抵当権を完全に消去し、買主が安心して所有権を主張できるようになります。

遺産相続

もし家の所有者が亡くなった場合、例えば親から子へというケースでは、亡くなった方(被相続人)からその家を受け継ぐ方(相続人)へと名義を変更する必要があります。

この手続きを「相続登記」といいます。

相続登記は、過去には期限が設けられていませんでしたが、2024年4月1日からは義務化されることになりました。

相続登記の義務化により、現在では不動産の所有者が亡くなってから3年以内に相続登記を行う必要が生じます。

これは、相続の手続きをスムーズに進め、不動産の所有権の明確化を図るための措置です。

しかしながら、適切な理由がない場合には相続登記の手続きを怠ることはできません。

もし無理由であれば、最大で10万円以下の過料が科せられる可能性があります。

したがって、相続登記の手続きを遅延させないように注意が必要です。

この義務化によって、相続登記が効率的に行われ、税務や財産管理の面でも誤解や混乱を防ぐことが期待されます。

将来的には、家族や第三者とのトラブルを未然に防ぎ、スムーズな相続手続きを実現することができるでしょう。

財産分与

離婚時の「財産分与」において、家の名義変更が必要になるケースもあります。

財産分与は、夫婦が離婚する際に、夫婦が共同で築いてきた財産を公平に分ける制度で、基本的には夫婦の財産を1つの財産を2人で半分ずつに分割することが原則とされています。

名義変更が必要となるケースは、例えば元々夫婦の共有名義であった家を、片方の名義に変更する場合などです。

ただし、土地と建物で所有者の名義が異なる場合や、住宅ローンが残っている場合には、手続きが複雑になる可能性がありますので、司法書士や弁護士などの専門家と相談しながら注意深く進めることをおすすめします。

生前贈与

生前贈与とは、財産の所有者がまだ生きている間に、無償で他の人に財産(不動産を含む)を譲ることを指します。

相続税の対策として、人々は生前贈与を行うこともあります。

不動産を贈与する場合、その名義変更手続きが必要となります。

生前贈与をすると、贈与される側には贈与税が課税されます。

特に不動産の贈与を受けた場合、登記免許税や不動産取得税など、不動産の購入や取得に必要な税金がかかることがあります。

生前贈与を検討する際には、これらの費用も考慮して判断することが重要です。

家の名義変更手続きの流れ

家の名義変更の手続きには、4つのケースがあります。

これらのケースには共通する手順や異なる手順があります。

まずは、不動産を売買する場合を例にして、名義変更の手続きを詳しく説明します。

不動産売買の場合

不動産を売買する際には、売主と買主の間での家の所有権移転が必要となります。

これに伴い、家の名義変更手続きが行われます。

まず、不動産仲介業者がアドバイスをしてくれます。

売買契約の成立

もし家の売買契約が取り決められた場合、売主と買主は売買契約書を作成することになります。

もし不動産会社が仲介している場合、不動産会社が売買契約書を作成してくれます。

必要書類の収集

不動産の売買では、売主と買主双方が異なる書類を提出する必要があります。

自分の立場に応じて、必要な書類を整えることが重要です。

不動産の売買には多数の書類が必要となりますので、早めに用意できなかったり、紛失してしまったりした書類がある場合は、不動産会社や司法書士に迅速に連絡を取ることが大切です。

彼らは必要なサポートを提供してくれるでしょう。

物件引渡しと代金の支払い

一般的に、不動産物件の引き渡しと売買代金の支払いは、複数の関係者が出席する形で金融機関で行われます。

これには売主と買主、不動産会社の担当者、そして司法書士が含まれます。

当日、売主と買主は必要な書類を用意し、それを司法書士に提出します。

司法書士は書類を確認し、問題ないことを確認した後、買主は売主に売買代金を支払います。

この支払いが行われると、取引は完了します。

このような手続きを通じて、売主と買主の間での不動産取引が正式に完結されるのです。

司法書士が法務局に申請

家の所有権を変更するために、家の売り手と買い手から必要な書類を受け取り、法務局に申請して所有権の移転登記を行うのが司法書士の役割です。

この手続きでは、必要に応じて抵当権を消去するための登記手続きも行われます。

つまり、司法書士は売買契約に関わる書類の受け渡しや法務局との手続きを代行し、所有権の移転がスムーズに行われるようサポートしてくれます。

登記完了の確認

登記申請をすると、約2週間後には登記手続きが完了します。

登記が完了すると、売主と買主には司法書士から権利証(登記識別情報)が郵送されてきます。

この手続きは不動産売買の場合だけでなく、他の3つのケースでも同じ流れです。

しかし、不動産売買以外のケースでは登記の完了後に異なる手続きがあります。

具体的には、ケースごとに異なる手続きがありますので、それぞれのケースに応じて確認してみましょう。

遺産相続の場合

遺産相続の場合の流れは以下の通りです。

不動産の名義を確認

登記事項証明書とは、ある不動産の名義人が誰であるかを確認するための書類です。

この書類を入手するためには、該当不動産が所在する管轄の法務局に申請する必要があります。

申請を受けた法務局では、不動産の登記簿を調査し、名義人の情報を記載した登記事項証明書を発行します。

この証明書には、不動産の所有者の氏名や住所、取得年月日などが記載されています。

登記事項証明書を取得することで、不動産の名義人を正確に確認することができます。

必要な書類の収集

相続登記を行ううえで必要な書類を集めます。

相続人の確定

もし遺言書が存在している場合、その内容に従うことになります。

しかし、遺言書がない場合は、法定相続人を特定し、相続人に該当する人物を見つける必要があります。

実は、相続人の特定はかなり複雑な作業です。

遺産分割協議書を作成する

もし遺言書が存在しない場合でも、相続人全員が集まり、遺産分割に関する協議を行い、相続財産を適切に分ける必要があります。

このために、まず相続人全員が合意した内容を確定させます。

その後、全員が署名し、実印を押して、「遺産分割協議書」という書面を作成します。

財産分与の場合

財産分与の場合の流れは以下の通りです。

財産分与の合意

最初に考慮すべきは、夫婦が所有する財産の分割方法についての合意です。

通常は離婚の際にこの合意がなされますが、離婚後でも法的に財産分与を請求することができます。

ただし、財産分与を請求できる期限は、離婚から2年以内に限定されています。

この点には注意が必要です。

必要書類の収集

財産分与を行う際に必要な書類は、裁判離婚と協議離婚とで異なることがあります。

裁判離婚の場合、裁判所が関与しているため、以下のような書類が必要となります。

登記申請書類の作成

この場合、財産分与が行われる際に名義変更が必要となります。

そして、名義変更のためには、財産分与の登記申請書を作成する必要があります。

この登記申請書は、財産を受け取る人と財産を渡す人の両方が協力して作成します。

生前贈与の場合

生前贈与の場合の流れは以下の通りです。

添付書類の準備

贈与登記においては、不動産を贈与する方とそれを受け取る方それぞれが用意する必要のある書類があります。

贈与する方は、不動産の所有権を移転させるために、贈与書や登記簿謄本などの書類を用意する必要があります。

一方、受け取る方は、贈与を受けることを証明するために、贈与承諾書や収納証明書などの書類を用意する必要があります。

したがって、各人は自身が必要とする書類を把握しておくことが重要です。

登記申請書の作成

法務局に申請するための登記申請書を作成します。

付属書類の作成

申請書と一緒に提出する必要のある書類は、不動産の取引が実際に行われたことを証明するための登記原因証明情報等です。

もし登録免許税の支払いに収入印紙を使用する場合、収入印紙が貼られた用紙も必要です。

これらの書類と手続きは、家の名義を変更するための様々なケースで異なる手順となりますので、名義変更を行う際には、あなたに該当するケースの手順を事前に理解しておくことが重要です。

家の名義変更にかかる費用

家の名義変更をする場合、必ず費用がかかることをご説明しました。

費用は、いくつかの種類があります。

以下に詳しく説明します。

登録免許税

不動産の所有権を移転するためには、必ず「登録免許税」という税金を支払う必要があります。

登録免許税は、所有権の移転登記にかかる税金であり、税率は移転登記の種類によって異なります。

税金の金額は、課税標準額に税率をかけることで決定されます。

登録免許税法には、「登記を受ける者が複数の場合は、それらの者は一緒に税金を納める義務がある」と定められていますが、一般的には登記による利益を得る側が税金を負担することが通常です。

具体的な税率と支払い負担は、以下のようになります。

●遺産相続の場合:税率は1,000分の4であり、税金を支払うのは相続した人です。

●財産分与の場合:税率は1,000分の20であり、税金を支払うのは所有権を取得した人です。

●生前贈与の場合:税率は1,000分の20であり、税金を支払うのは贈与を受けた人です。

●不動産売買の場合:税率は1,000分の20であり、税金を支払うのは買主です。

また、登記は不動産ごとに行われるため、例えば土地と建物の両方を含む一戸建てを売買する場合は、土地の所有権移転登記と建物の所有権移転登記の双方が必要です。

したがって、それぞれの登記には別々の税金が発生します。

さらに、住宅ローンを抱えている場合、抵当権を抹消するための登記も必要です。

この場合、住宅ローンの借主は不動産1件につき1,000円の登録免許税を支払う必要があります。

抵当権抹消登記の費用は通常、売主が負担することが一般的です。

司法書士の報酬

司法書士に登記業務を依頼する際には、その業務の報酬を支払う必要があります。

報酬は、不動産の価格や依頼する司法書士によって異なりますが、一般的には数万円から15万円程度が相場となっています。

具体的な金額は、業務内容や取引の複雑さに基づいて決定されます。

また、相続登記の場合は、相続人の人数によって報酬の金額が変動することがあります。

相続人が多ければ多いほど、登記手続きに要する時間や手間が増えるため、その分報酬も高くなる傾向があります。

総じて言えることは、司法書士への登記業務の依頼には費用がかかることであり、その金額は案件の内容や相続人の数によって異なるということです。

依頼する前に、具体的な料金について司法書士と相談し、明確な見積もりを取得することが重要です。

そのほかの税金

先ほど紹介した費用以外に、不動産の所有権を譲渡した際にかかる可能性のある税金について詳しく説明します。

具体的なケースと税金をご紹介します。

1. 遺産相続: 不動産を相続した場合、相続税が発生します。

2. 財産分与: 財産を分け与える場合、贈与税、譲渡所得税、不動産取得税がかかります。

3. 生前贈与: 生前に財産を贈与する場合、贈与税と不動産取得税がかかります。

4. 不動産売買: 不動産を売買する場合、譲渡所得税がかかります。

離婚時の財産分与において、基本的には贈与税はかかりません。

しかし、分与の割合に明らかな偏りがある場合や、離婚を目的に贈与税を回避する意図があると疑われる場合には、贈与税が発生する可能性があります。

また、分与時の不動産の時価が取得時の時価を上回る場合には譲渡所得税がかかります。

さらに、慰謝料や生活保護のために不動産を分与する場合には不動産取得税が発生する可能性があります。

上記の表に加えて、移転に伴う引越し費用や不動産会社への仲介手数料など、具体的なケースによってかかる費用もあります。

したがって、事前に概算を把握しておくと良いでしょう。

家の名義変更に必要な書類

家の所有権を変更するには、名義変更手続きが必要です。

名義変更の手続きには、書類の準備が欠かせません。

名義変更には、状況に応じて異なる書類が必要となりますので、抜け漏れのないように以下の情報を参考に、必要な書類を準備しましょう。

不動産売買で必要な書類

不動産の売買を行う際には、様々な書類が必要となります。

具体的には以下の表に示されている通り、売主と買主で必要な書類が異なります。

また、司法書士に依頼する場合には、それぞれの当事者が司法書士に委任状を提出する必要があります。

売主の場合、以下の書類が必要となります。

●3か月以内に取得した印鑑証明書

●登記済権利証(または登記識別情報通知)

●固定資産評価証明書

●住民票または戸籍の附表

●顔写真付きの本人確認書類

買主の場合

●住民票

●3か月以内に取得した印鑑証明書

●顔写真付きの本人確認書類

以上が不動産売買において必要な書類についての説明です。

お互いの当事者間で適切な書類を提出し、スムーズな売買手続きを進めることが重要です。

遺産相続で必要な書類

相続手続きを行う際に必要な書類は、以下の通りです。

相続登記は、オンラインで申請をすることができます。

ただし、後日必要となる添付書類は、法務局(登記所)に持参するか郵送する必要があります。

被相続人に関する書類としては、次のものが必要です。

●被相続人の出生時から死亡時までの戸籍謄本

●被相続人の住民票に関する情報が記載された住民票除票または戸籍附票

相続人に関する書類としては、次のものが必要です。

●相続人全員の戸籍謄本

●遺産を受け継ぐ人の住民票

●遺言書または遺産分割協議書

●法定相続人であることを証明するための印鑑証明書(遺産分割協議書を作成する場合に必要です)

相続する不動産に関する書類としては、次のものが必要です。

●登記申請書

●相続する不動産の評価額を証明するための固定資産評価証明書(申請年度時のものが必要です)。

財産分与で必要な書類

財産分与の場合、協議離婚と裁判離婚では必要な書類が異なります。

協議離婚では、夫婦が共同で準備し、申請する書類が必要です。

一方、裁判離婚の場合は、一定の条件を満たせば、財産分与を受ける側が個人で申請を進めることもできます。

協議離婚の場合、必要な書類は以下の通りです。

財産分与する人の場合

●印鑑証明書(3か月以内に発行されたもの)

●登記済権利証(登記識別情報通知)

●固定資産評価証明書

●住民票または戸籍の附表(登記上の住所から住民票の住所が変わっている場合のみ)

●離婚の記載のある戸籍謄本

財産分与を受ける人の場合

●住民票

●記原因証明情報

一方、裁判離婚の場合は以下の書類が必要です。

財産分与する人の場合

●無し

財産分与を受ける人の場合

●住民票

●固定資産評価証明書

●調停調書、和解調書などの書類

これらの書類は、裁判所に提出するためのものです。

裁判離婚の場合は、裁判所の手続きに従う必要がありますが、協議離婚では夫婦が話し合って合意し、書類の作成と申請を行うことができます。

生前贈与で必要な書類

生前贈与手続きを行う際には、いくつかの書類が必要となります。

贈与する側と受ける側で、用意する書類が異なるので、よく確認しておきましょう。

贈与する方が用意する書類

●印鑑証明書(取引日の時点で3か月以内に取得したもの)

●登記済権利証(または登記識別情報通知)

●固定資産評価証明書

●住民票または戸籍の附表(登記上の住所から住民票の住所が変わっている場合には必要)

受け手側が準備する書類

●住民票

不動産に関する書類

●不動産贈与契約書

●登記申請書が必要です。

また、印鑑証明書は市区町村役場だけでなく、マイナンバーカードを持っていればコンビニエンスストアのコピー機でも取得することができます。

ただし、地域によってはまだ普及していない場合もあるので、予めお住まいの地域の状況を確認しておきましょう。

まとめ|家の名義変更をしないとどうなる?

ここまで、家の権利関係を変更する手続きについて詳しくお伝えしましたが、手続きには時間や手間がかかることがあるため、面倒くさく感じる方もいるかもしれません。

しかし、家の名義変更を行わない場合、自分の権利を主張することができず、家を売却したり担保に入れることができなくなるリスクがあります。

ですから、家の名義変更はできるだけ早く行うべきです。

しかし、名義変更は手間がかかる上に難しい要素もあります。

だからこそ、心配な方は専門家や不動産会社などのプロに相談することをおすすめします。

彼らは豊富な知識と経験を持っており、的確なアドバイスや支援を提供してくれることでしょう。